那谷寺

那谷寺は、九谷焼の陶石が取れる白山の麓に位置する石川県小松市の仏教寺院。広い境内は奇岩遊仙境と称され、紅葉狩りの名所でもある。岩窟内に造られた本殿など5つの重要文化財と2箇所の名勝がある。本展は、特別拝観エリアに位置する『書院』と言われる江戸時代初期の書院建築の姿を現在に伝える貴重な建造物の中と、庭園に位置する茶室『如是庵』の中において展示が行われる。

沖潤子

《月と蛹 03》2017 木綿、亜麻、包帯、鉄枠、蜜蝋 H120.3×W91×D2.8 cm

《蜜と意味 06》2018 絹、麻、木綿、鉄、蜜蝋
H158×W25.5×D23 cm

《蜜と意味 03》2018 絹、木綿、羊毛、筵、木箱、釘、アクリル樹脂
H130×W44.3×D10.3 cm

展示風景「anthology」(2020-2021) 山口県立萩美術館・浦上記念館

布に糸を一針一針縫い込む「縫い」の作業によって誕生した作品で、針一本で自在に造形物をつくり出す。圧倒的な集中力である。縫い付けられた糸によって布が引っ張られて、作品によっては膨らんでいたり、中には立体化してしまっているものもあり、縫う作業が空間にまで展開する。ビビッドな色彩感覚と装飾のパターン、一心不乱に縫い続ける集中力が魅力的な世界をつくり出している。詩情溢れる作品である。

1963年埼玉県浦和市生まれ。セツ・モードセミナー卒業。企画会社勤務を経たのち、2002年から自己流で刺繍を始める。細いミシン糸を用いた繊細な刺繍表現で、2009年から本格的に作品制作を開始。以後、ジャンルに捉われることなく、幅広く国内外で展覧会を開催。2017年第11回shiseido art egg賞受賞。2014年には作品集『PUNK』(文藝春秋)を刊行。金沢21世紀美術館に作品が収蔵されている。

神代良明

展示風景「火と大地と僕たちと。神代良明|角居康宏」(2019) 瀬戸市新世紀工芸館

展示風景「火と大地と僕たちと。神代良明|角居康宏」(2019) 瀬戸市新世紀工芸館

展示風景「火と大地と僕たちと。神代良明|角居康宏」(2019) 瀬戸市新世紀工芸館

《Structural Blue》2015 ガラス、酸化銅粉 発泡鋳造 H39×W54×D54 cm

《Structural Blue 30R.1》2019 ガラス、酸化銅粉 発泡鋳造 H24×W31×D31 cm

《Structural Blue 45.1》2015 ガラス、酸化銅粉 発泡鋳造 H36.5×W48×D46.5 cm

半円球や立方体などの幾何形体を基にした、白やブルーなどの抑制の効いた色彩からなる作品を制作している。物の構造や力学に興味があるというように、ガラスが化学反応したときの変化をそのまま作品制作に取り込んでいる。だから神代が形や色をつくるというよりも、選んだ材料による化学変化によってうまれた色彩や形態が、そのまま神代の作品を決定する。そこが神代の作品の良さであり、ミニマルなスタイルが特徴である。

1968 年生まれ。東京理科大学大学院にて建築計画専攻修了。株式会社現代計画研究所にて建築設計に6年間携わる。東京ガラス工芸研究所、金沢卯辰山工芸工房を経て独立。素材と人との関係への関心から、発泡ガラスの焼成過程を注視した制作を行っている。国際ガラス展・金沢2004で大賞、LOEWE FOUNDATION Craft Prize 2017で特別賞を受賞。ヴィクトリア&アルバート博物館、モダン・ピナコテーク、コーニングガラス美術館、 富山市ガラス美術館、ロエベ財団などに作品が収蔵されている。

佐々木類

展示風景「Nyctophilia -Light in the Absence of it」(2019)
エベルトフトガラス美術館(デンマーク)

《Liquid Sunshine》2016 ガラス、蓄光ガラス混合物、ソラリウムライト、人感センサー 吹きガラス

《Weather Mirror》2020 ガラス、蓄光ガラス混合物、鏡 吹きガラス、フュージング Φ49.5×D4 cm

《Liquid Sunshine /そらにみつろうか》2020
ガラス、蓄光ガラス混合物、ライト、ライティングコントローラー 吹きガラス、コールドワーク

《Liquid Sunshine》(部分)2016 ガラス、蓄光ガラス混合物、ソラリウムライト、人感センサー 吹きガラス

佐々木は、使用しているガラスという素材について、物ごとの記憶を保存するための容器だという。ガラスは表現するための媒体であって、それ以外ではない。アート作品なので形態はあくまでも自由な形で日常我々が眼にする道具の容器という意味ではもちろんない。植物をガラスに閉じ込めて制作した「植物の記憶」や光をガラスに溜めた蓄光型の作品など、物やことをガラスに閉じ込めて、見ている側に何らかの記憶にまつわるイメージを呼び覚ます。

1984年高知県生まれ。2006年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科ガラス専攻卒業。2010年ロードアイランドスクールオブデザインガラス科修士課程修了。国内外で精力的に作品発表し、受賞歴多数。欧米や北欧の美術館に作品がコレクションされている。2019年コーニングガラス美術館に大型のインスタレーション作品が収蔵された。2021年富山市ガラス美術館やラトビア国立美術館などの企画展に参加。2020年春、ニューヨークタイムズ紙に作家として特集された。現在は金沢卯辰山工芸工房専門員に従事しながら、金沢市にて作品制作を行う。

澤田真一

《無題》2007 陶 H33×W17×D12 cm

《無題》2007 陶 H34×W16×D13 cm

《無題》2007 陶 H39×W11×D11 cm

《無題》 陶

《無題》 陶

《無題》 陶

澤田は、架空の動物とも人間とも思えるようなシンボリックな陶芸オブジェを制作する。奇怪だが、どことなくユーモラスにも見える。表面を覆う無数の棘は、世界を感受するセンサーとも、自分を保護する体毛ようにも見える。当初は、手に乗るほどの小さな動物のようなオブジェの制作から始まったが、やがて大きくなり、突起物をもった人間や動物を想起させるオブジェとなった。人間は直立形で常に表現されている。スタイルは少しずつ変化し、最近では棘の本数も減ってきている。

1982年滋賀県生まれ、同地在住。社会福祉法人なかよし福祉会・栗東なかよし作業所に通いながら作陶を行う。2008年滋賀県文化奨励賞受賞。主な展覧会に、2010年「アール・ブリュット ジャポネ」(アル・サン・ピエール)、2013年第55回ヴェネチア・ビエンナーレ、2020年「あるがままのアート—人知れず表現し続ける者たち—」(東京藝術大学大学美術館)などがある。パブリックコレクションに、 アール・ブリュット・コレクション、滋賀県立近代美術館、日本財団などがある。

田中信行

《Inner side - Outer side》2005 漆、麻布 乾漆 H220×W158×D85 cm
展示風景「サイレント・エコー コレクション展 I」(2011) 金沢21世紀美術館

《触生―原初》2017 漆、麻布 乾漆
H215×W300×D27 cm 展示風景「奥能登国際芸術祭」(2017)

《Imaginary Skin Ⅰ》2016 漆、麻布 乾漆 H212×W130×D60 cm

左:《触生》2003 漆、麻布 乾漆 H173×W76×D2 cm
右:《無題》2003 漆、アルミ アルミに黒漆塗り、呂色仕上げ H173×W76×D2 cm

巨大な立体作品の制作の中で漆を真正面から技法として取り込んだ第1世代であり、大型のアート作品として漆芸を展開してきた作家である。漆の質感を表現のために活用してきた田中がつくり出す塗面は実に美しく、また形態も独特の曲面をつくり出していて、造形的な追及の結果である。独立した作品として場所を選ばずに設置可能だが、空間との対応関係が生まれ、サイトスペシフィックな見方もできるのは、漆の効果かもしれない。

1959年東京都生まれ。東京藝術大学大学院修了。漆による新たな造形の世界を切り開き、第14回タカシマヤ文化基金タカシマヤ美術賞、第18回 MOA 岡田茂吉賞大賞を受賞。2018年から2019年にかけて、ドイツのカイザースラウテルン美術館、ミュンスター漆美術館にて個展を開催。東京国立近代美術館、豊田市美術館、金沢21世紀美術館、森美術館、メトロポリタン美術館、ブルックリン美術館、ミネアポリス美術館、フィラデルフィア美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館、グラッシー美術館、カイザースラウテルン美術館、ミュンスター漆美術館、湖北省美術館などに作品が収蔵されている。金沢美術工芸大学教授。